カトレックス　～創業以来150余年、六代にわたる時計作り～

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カトレックス　～創業以来150余年、六代にわたる時計作り～

2016.12.07

スイスのジュラ山脈にいだかれたレ･ブルルーの地で時計作りを始めて150余年。カトレックスはスイスの伝統ある時計メーカーの中でも6代にわたり血筋の経営を続ける希少な1社である。その歴史は、創始者であるジョルジュイグナスカッティンにより19世紀初頭に幕を開けた。当時、貴族の嗜好品だった懐中時計を実用品として広めようと尽力し、彼の意志を継いだ息子のコンスタントが1858年に懐中時計を専門に製造するカッティン社を設立。その実力は高く評価され、1900年代に旧スイス国有鉄道のオフィシャル懐中時計に採用されるなど、輝かしい歴史を持っている。カッティン社は衰退する懐中時計の歴史的価値を見直し、あえてその製造に特化したのだ。その後、設立100周年には時計作りの頂点を目指ざす心構えを表してラテン語で王を意味するREXと、家系の証であるCATTINを合わせたCATOREX（カトレックス）の名をブランド商標として登録。時代遅れと囁かれた懐中時計作りを寡黙に続け、1980年代には経済恐慌やクオーツ時計の隆盛期にも、携帯時計の起源である懐中時計を守りながら幾多の苦難を乗り越えてきた。

21世紀を境に、前世紀の遺産となりかけていたスイスの懐中時計づくり。今まさにスイスにおける懐中時計生産の専業メーカーは希少となっているだけに、カトレックスの存在は世界中で再評価され、懐中時計用の汎用ムーヴメントを保護してきた陰の立役者としてその功績が認められている。スイスの時計史を語る上で欠かせない懐中時計の存在価値や古典的意匠は、カトレックスより生み出される復刻品ではなく、現行品として今日にも味わえる。その老舗の懐中時計メーカーが2010年から本格的に腕時計製造をスタート。バーゼルワールドで続けざまに新製品を発表し、注目を集めた。その特徴は、長年培われた高い技術により高品質にこだわりながらも、手に取りやすい理想的な価格帯を実現したことにある。

現在は、6代目のガイ・A・カッティンが経営を担い、高騰するスイスの時計産業界において、リーズナブルな機械式時計を展開しようと再び腕時計の生産に着手している。スイス製ムーヴメントを採用し、高級品と同様の素材を取り入れ、高品質を目指しながらも理想的な価格を実現。2012年には、AS社製のオールドムーヴメントをリファインして搭載した限定モデルも発表した。こうして懐中時計から腕時計に至るまで、品質にこだわりながら魅力的な価格を実現できるのは、連綿と続く家族経営の姿勢にある。大手グループや投資家に傾倒せず、過剰な宣伝や設備投資を抑える体制が純粋な価格設定に結実しているのだ。常に築き上げた伝統を貫き、次代へとスイス製時計の歴史的価値を伝えるのがカトレックスの信条なのだろう。

C’Vintage AS2063 Automatic　世界499個限定生産

C’Vintage（シー・ヴインテージ）は150余年に及ぶ時計製造の歴史に敬意を表し発表された499本の世界限定モデル。かつてスイスを代表するムーブメント事業メーカーだったア・シールド社が1960年代当時製造していた自動巻きムーブメント“キャリバーAS2063”を搭載したリミテッドエディションである。そのデザインは懐中時計の専業メーカーだったカトレックスが1960年代後半から1970年代初頭にかけて、ごくわずかにわずかに製造していたカトレックスのラウンド型モデルからインスピレーションを得てデザインされている。文字盤の色はネイビー、ダークグレー、シルバー、コッパーの4色をラインナップ。12、3、6、9のアラビア数字とバーを組み合わせたインデックスにシャープなドルフィン針によるシンプルなデザインは、現代のビジネスシーンにおいても飽きの来ないシンプルなスタイルといえるだろう。

アドルフシールド社製　AS2063 オートマチックムーブメント　

1896年に創業したアドルフシールド社は高級キャリバーを製造するエボーシュ(ムーブメント部品)メーカーとして高い評価を受けていた。全盛期にはハーウッド式エボーシュをブランパン社などに供給。また当時、ユリス・ナルダン、チュードル、ラドーにも採用される程、優れた自動巻機械を製造していた。しかし時代の流れから1978年ETA社と合併、その技術は現在のETAに受け継がれ、1983年には“AS”と刻まれたムーブメントの生産は終了してしまった。中でも当時高精度を誇るムーブメントだったAS2063は、アドルフシールド社の最終期(1969-1978年)に製造された型巻き上げ式の自動巻きムーブメントである。

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